ジャンクな宵

 心身ともにハイテンションで過ごした一日の終わり。まだ緊張が精神的にも肉体的にも残ってしまっている宵は、迷わずジャンクフードを食べて自分自身に強制終了をかけます。

 特にお世話になる事が多いのはポテトチップス。それもオーガニック、ノンフライ、無添加のヘルシースナック系ではなく、どこにでも売っているスナック菓子系ど真ん中のポテトチップスです。
 結構、勢いに乘って快活に食べるのですが(アレグロ・ヴィヴァーチェな感じ)、以前、チップスの先端が歯茎に思いっきり刺さってしまった事があり、その時に非常にグラフィックな流血シーンを経験しているので、最近ではもっぱらポリポリ、モグモグなテンポ(アレグロ・マ・ノン・トロッポな感じ)で食べやすいスティック状のものを好んで食しています。ですから、正確にはポテトチップスではなくポテトスティックをがっついている事になります。

 人智学のパイオニアであるルドルフ・シュタイナーは健康と食の関係性を考察した著書の中で、じゃがいもを食べると脳の機能が低下すると綴っており、じゃがいもの大量消費はヨーロッパ全体の斜陽化にも繋がっているという独自の見解を述べていますが、個人的な経験から頷ける部分が確かにあります。

 脳を怠惰にするじゃがいも。それも決して上質とは言えない油でしっかり揚げられたポテトチップス。ヒマラヤンピンクソルトなどとは縁遠い塩も容赦なく振られていて、添加物も堂々と入っている。
 これほど完璧なジャンクフードなら、ダブル、トリプル、クワドループルの破壊力で脳を侵略し、どんなに強固な意志でも太刀打ちできないレベルまでシャットダウンされた心身を、極めて短時間で効率よく創り上げてくれるのも当然です。

 ただ本能の赴くままに食べ、後はもう何もまともに考えられない、動けない - ポテトチップス本来の作用と効果に正しく助けられ、ジャンクフードならではのダークな快楽まで楽しんだら頭は完全に思考停止、身体はダラダラの状態で忘却の彼方へトリップ。長年の瞑想でもなかなか到達困難な「無の境地」へ楽々とゴール。
 見事なカウチポテト(Couch Potato)の出来上がりです。

 ポテトチップス、おそるべし。