松浦亜弥 – 渡良瀬橋

 オリジナルは森高千里さんですが、私は松浦亜弥さんが歌う「渡良瀬橋」がとても好きです。

 THE IDOLと呼ぶに相応しいルックスだけではなく、松浦亜弥さんは甘く、涼やかな透明感のある声に恵まれ、それを最大限に活かす事が出来る歌唱力も持ち合わせた実力派ヴォーカリストだと思います。
  例えば「dearest.」や「砂を嚙むように…NAMIDA」などを聴いても、彼女の表現者としての幅の広さとポテンシャルの高さが分かるのではないでしょうか。

 松浦亜弥さんが「渡良瀬橋」を歌う時、少し色褪せた写真のような懐かしさと物悲しさに包まれた情景が広がります。
 「過去」という変える事が出来ない人生のある場面を、未練や執着ではなく、非常に静かな心で再体験し、受け入れ、今はまだ難しくてもいずれは手放せる時が来る 。今の自分であの日の自分を理解し、あの時の「あなた」の事もより深いレベルで理解する – 松浦亜弥さんが表現するこの曲からは、そういう濁りのない切なさが響いてくるのです。

 渡った橋は引き返せないのが人生。ただ前へ進む事しか出来ないのですが、遠ざかっていく景色の中に愛が散らばっていれば、それだけで幸せなのかも知れません。