才能と試練は正比例する - 鬼束ちひろさんの場合、まさにその通りではないでしょうか。
恵まれた容姿、独特の揺らぎを持った声、低音から高音まで美しく歌い上げる歌唱力と憑依体質的な表現力、そして彼女にしか描けない世界を創造する作曲と作詞の底力。
二物どころか複数の人間が集まっても抱えきれないほどの才能を天から与えられた鬼束ちひろさんは、天才と呼ばれるに相応しいアーティストでしょう。
鬼束ちひろさんは、彼女自身が経験している痛みを作品という物語に昇華させて歌っているからこそ、彼女の曲を聴いている私たちもその痛みを鮮明に感じ、鬼束ちひろさんが苦しんだ苦しみを苦しみの中で情景的に描いているからこそ、凄まじい説得力で私たちの苦しみとも共鳴・共振するのだと思います。
実際に鬼束ちひろさんが表現する悲しみや痛みは、涙が出るという分かりやすい反応を呼ぶだけに留まらず、聴いている側の喉や胸やお腹にも身体的変化を生じさせると感じます。
彼女の作品とパフォーマンスは、それほど心身に響き渡る特別なパワーを持っているのです。
何度も傷付き、倒れ、転がっては起き上がった傷だらけの鬼束ちひろさんが、さらに磨き上げられたダイアモンドのような美しい耀きで、いつかまた私たちにその素晴らしい歌声を届けてくれる日が来ることを、心より祈り、願って止みません。