ブラームス ピアノ協奏曲第1番  -     グールドとバーンスタイン

 2023年、最初に聴いたコンチェルトはグレン・グールドとレナード・バーンスタインという20世紀が誇るとてつもない天才二人によるブラームスのピアノ協奏曲第1番です。

「しびれる」 ー 二人のコラボレーションは、この一言に尽きます。まさにワン・アンド・オンリーのスタイルで曲を解釈するグールドと、そのイディオシンクラティックな演奏に必要以上に譲歩せず淡々と指揮するバーンスタイン。

 このパフォーマンスは1962年にカーネギー・ホールで録音されたものなので、一回り以上若いグールドはもちろん、バーンスタインもまだまだ「血が熱い」頃だったと思います。
 それにも関わらず、バーンスタインはグールドの世界観と正面衝突する事なく、美しい調和の中でこの演奏を見事にまとめています。

 ライブ・パフォーマンス録音の冒頭で、バーンスタインは観客へ向けてグールドとの共演に対する自身の動機や想いを語っていますが、このスピーチの中で特に印象的なのは、本来は彼自身のそれとは相容れないグールドによるこの曲の解釈と演奏を「冒険という精神」で敢えて受け入れ、その特別な経験がもらたす特別な感動を観客へ届けたいと語っている事です。

 天才が天才を認め、その才能を最大限に尊重し、そして天才のために出来る事を天才だからこそ出来る形で捧げる。

 本物の天才が本物の才能に触れた時、そこにあるのは嫉妬や競争心ではなく、深い尊敬と芸術そのものに対する大きな愛なのだと改めて感じた夢の共演です。