演奏も演技も歌もダンスも、実際に音、言葉、動きが発せられる時だけではなく、音と音、言葉と言葉、ステップとステップの隙間を表現する事が非常に重要です。
例えば音楽の場合、休符という素晴らしいシンボル的なメッセージがあります。シンボルというものは、本来、とても大きく、深いコンテンツを包含しながらも、それをシンプルなサインや記号に集約・凝縮して伝えている一つの表現方法ですが、休符はまさにこれに該当するシンボルだと言えるのではないでしょうか。
パフォーマンスが巧みなほど、ついついテクニックに乗って起こっている「アクション」に注意が行きやすくなると思いますが、表現というものは「沈黙」や「静寂」がなければ成立しません。
何もないからこそ何かが生まれる訳ですから、休符もまた音が生まれるために必要とされるクリエイティヴな「無」だと言えるでしょう。
休符の存在を尊重するのはもちろん、その余白を可能な限り有効活用してこそ、前後に連なる音にさらなる美を重ねる事が可能になり、旋律に調和がもたらされます。
曲という物語に絶妙なタイミングで散りばめられている休符は、小粒でも音楽の耀きを増幅させるクリスタルのようなパワーを秘めた実に美しい存在なのです。