エリック・クラプトンは、言うまでもなく類まれな才能に祝福された超一流のアーティストです。
その慈愛に満ちた歌声、そしてテクニックという枠組みを超越したギター演奏は、長きに渡って国や世代を問わず多くの人達に愛されてきたと思います。
大切な想い出とセットになって心に残っているクラプトンの曲がある方は、きっと日本にも多いのではないでしょうか。
エリック・クラプトンのレパートリーには名曲が沢山ありますが、私がクラプトンの表現者としての魂を最も感じた一曲は、実は彼自身が歌う事なく、ただひたすら心を込めて静かにギターを弾いているDanny Boy(ダニー・ボーイ)というアイルランド民謡です。
この曲を弾くクラプトンからは、無限大の愛が伝わってきます。それこそどんな言葉でも表現出来ないような優しさを、彼は一瞬一瞬のギターの調べに乗せて淡々と届けてくれるのです。
まるで彼の心と指が一つになって演奏しているかのように。
エリック・クラプトンの音楽には、深い悲しみを経験し、絶望の果てにそれを乗り越え、なんとか再び光を感じる事が出来たサバイバーこそが奏でられる「諸行無常」の響きがある - そんな気がします。