もともとはスザンヌ・ファレルのために創られた作品を他のバレリーナが踊っている例として、ナタリア・マカロワが自身のDVDにも収録しているモーリス・ベジャールの「バッハのソナタ」があります。
デニス・ガニオをパートナーに、マカロワはこの作品を非常に美しく踊っており、それはそれで素晴らしいパフォーマンスなのですが、やはりスザンヌ・ファレルが踊るオリジナル・ヴァージョンとは全く異なる世界観になっています。
もちろん、これは好みの問題もあるでしょうが、マカロワはこの作品をお行儀よく踊り過ぎていて、スザンヌ・ファレルが醸し出していた甘美な「曖昧さ」や薄いガラスが砕けてしまう寸前のような「危うさ」がないのです。