初めてスザンヌ・ファレルのパフォーマンスを観たのは1970年代後半でした。バランシンのアポロでテルプシコレーを踊る彼女は、ある意味、人間とは思えないエネルギーを放っていました。
舞台の上のスザンヌ・ファレルからは世俗的なものが微塵も感じられず、まさに彼女は別世界、別次元でたゆたう女神そのものだったのです。
スザンヌ・ファレルが踊る空間には柔らかい光が広がり、その光が彼女の動きと共に波打つ - それは、まるで甘美な蜃気楼に包まれているような魔法の時間でした。
彼女のパートナーとしてアポロ役を踊っていたピーター・マーティンズには申し訳ないのですが、その夜、場は完全にスザンヌ・ファレルに支配され、太陽神さえもこの美しく、気高いミューズのオーラに圧倒されているという印象でした。