ゴンドラの唄 松井須磨子

命短し、戀せよ、少女
赤き唇褪せぬ間に
熱き血汐の冷えぬ間に
明日の月日はないものを

命短し、戀せよ、少女
いざ手を取りて彼の舟に
いざ燃ゆる頰を君が頰に
こゝには誰も來ぬものを

命短し、戀せよ、少女
波にたヾよひ波の樣に
君が柔手を我が肩に
こゝには人目ないものを

命短し、戀せよ、少女
黑髮の色褪せぬ間に
心のほのほ消󠄁えぬ間に
今日はふたゝび來ぬものを

ゴンドラの唄(大正3年)
作詞:吉井勇
作曲:中山晋平