ベートーヴェン ピアノソナタ第17番二短調 Op.31 No.2「テンペスト」

 多くの偉大なピアニストによって解釈・演奏されている「テンペスト」。

 座って聴いている分にはどのパフォーマンスも素晴らしいのですが、レッスンでステップの始点、終点、緩急、そして高さ、深さを繊細に踊り上げるためには、グールドは癖が強過ぎ、バレンボイムは甘過ぎ、フジ子・ヘミングはエモーショナル過ぎ、ポリーニは速過ぎるので、結局、持っているCDの中で選んだ一枚は、まさに丹田に満ち溢れたエネルギーが指先から放出されているようなスヴャトスラフ・リヒテルによる甘美で有機的な演奏です。

 非常に高い生命力を感じるリヒテルのピアノに操られ、透き通った空の下、ちょっと乾いた大地を足の裏に感じながら、どこからともなく吹いてくる風に煽られて踊った楽しい時間でした。