スザンヌ・ファレルは、ポール・ド・ブラ(腕の運び)だけではなく、そのポール・ド・テット(頭の運び)にも彼女ならではの表情を散りばめています。
例えばバランシンのツィガーヌでロマを踊っている時など、弦のつま弾き一つひとつに繊細に反応している彼女の顔の傾き加減や眼差しが、ポール・ド・テットがいかに踊りの雰囲気作りに大きな影響を与えるかを立証しています。
加えて、エポールマン(下半身との関係性の中で、肩も含めた上半身の操作によって表現されるアングル、ライン、シルエット)も音そのものに導かれていて、彼女の踊りがみるみるうちにラヴェルの音楽と一体化していく素晴らしさに深く感動させられるのです。