ジョージ・バランシンはもちろん、モーリス・ベジャールのミューズでもあったスザンヌ・ファレルは、その輝かしいキャリアを通して、オデットもジゼルもキトリもオーロラも踊る事無く一世を風靡した稀有なバレリーナです。
スザンヌ・ファレルの踊り方は、クラシカルな観点からすると非常に「個性的」なスタイルであると言えます。彼女の踊りを語る際、なかなかぴったりな表現が見つからないのですが、敢えて一言で表現するのであれば、英語のidiosyncraticが最も近いように感じます。
スザンヌ・ファレルのダンスの特異性は、彼女が受けたスクーリングが徹底したバランシン・テクニックであったという背景もありますが、同世代のニューヨーク・シティ・バレエのバレリーナ達と比較しても、スザンヌ・ファレルの舞い方 ー そう。踊るというよりは「舞う」という言葉の方が相応しいそのダンス・スタイルは、One & Onlyだと思います。
スザンヌ・ファレルが全身全霊で奏でるバレエは、まさに唯一無二の天空の舞なのです。