ジャン=マリー・ルクレールの音楽を初めて聴いた時、素直に身体が踊り出しました。それはとてもじっと座って鑑賞出来るような旋律ではなく、非常にストレートに心に飛び込んで来て、あっという間に身体の隅々まで響き渡るようなエネルギーを持っていたのです。
夢中になってルクレールの曲を聴いては踊り、踊ってはまた聴きたくなる。それこそ魔法にかけられたような時間を過ごし、後日、この美しい音楽を織り上げた素晴らしい作曲家の事を調べてみると、ルクレールはダンサーでもあった事が分かりました。
それも一時期はトリノのレージョ劇場でプルミエール・ダンスール(プリンシパル・ダンサー)として踊った経験を持ち、最初に結婚した女性もダンサーだったのです。
これは私の勝手な想像ですが、おそらくルクレールは全身で作曲していたのではないでしょうか。彼の心と身体が完璧な調和で奏でた音の連なりが、とても素直で純粋な軽やかさ、そして透明感のある憂いを持った作品を生んだ。そんな気がします。
ルクレールの音楽は、悲しみの果てに「ああ、生きていて良かった」 ー そう人生に感謝させてくれる癒しと救いを持った調べだと思います。