踊りそのものが芽生え、開花し、消えて行く風景は、ステップを連ねる以前に音楽によって完璧に描き上げられています。
コリオグラファーの役目は、曲がすでに立ち上げている景色の一部として舞うダンサーに必要な鼓動や流れを、その世界観と干渉する事のない形で経験してもらう事です。
作品で踊られるステップの一つひとつが、音楽を最大限にリスペクトしているという事はもちろん大切なのですが、振付けという作業が踊りの中で主張されていないという点も重要です。
花びらを美しく舞わせる風は、感じる事は出来ても決して見る事は出来ません。見えないからこそ、花びらの美が引き立つのです。
振付けという美の創造過程は、その風を「どう吹かせるか」に尽きると思います。