クロワゼを踊る過程で上半身と下半身は非常に拮抗して動くため、身体全体の縮めている部分と伸ばされている部分の両方を、より鮮明に体感するはずです。
この全身運動を通してポール・ド・ブラ(腕の運び)は肩が上がってしまう事なく柔らかくそよぎ、首も緊張していない状態で気持ちよく伸びて、自然発生的なポール・ド・テット(頭の運び)により顔もクロワゼらしい方向へと流れて行きます。
一連の繊細な上半身のコーディネーションとシンクロナイゼーションの結果、ダンサーの眼差しはクロワゼの景色をクロワゼらしい目線で眺め、観客もまたその情景を感じ取る事が出来るのです。
このような調和の中で立ち上がったシルエットこそ、クロワゼらしい雰囲気とエネルギーに満ち溢れ、ダンサーのボディラインを超越した高さ、広がり、奥行きを創り上げてくれます。
クロワゼを心と身体で「歌い上げる」意識と表現が、クロワゼという世界観に相応しい振動を美しい音楽のように響き渡らせ、その経験を客席と共有する喜びを叶えてくれるのです。